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源氏物語図屏風「胡蝶」〈左隻〉

詳細解説

 『源氏物語』の第24帖「胡蝶」の巻、第1章第1段の描写を描いた屏風である。
 主人公の光源氏が自邸で催した管弦の宴の一幕で、唐風(中国風)の船を造らせて女房(高貴な人に仕えている女性)たちを乗せ、敷地内の池を漕ぎまわらせている場面である。
 唐風の船が色彩鮮やかに描かれ、花浅黄色の装束が目を引く漕ぎ手やそれぞれに華やかな女房装束を身につけた女性達が乗っている。季節は春で、強い色味のマツや苔のほか、前景にフジ、中景にサクラ、ヤマブキ、ツツジ、ヤナギの若芽などが丹念に描きこまれている。
 金を使って春霞を表現し、空間の奥行を感じさせる描写が秀逸である。

 署名と印から作者は板谷桂意廣長(1760-1814)で、幕府の奥絵師であった板谷家の2代目である。板谷家は大和絵の画派・土佐派の流れをくむ住吉家の分家で、天明2年(1782)に創立された家である。

 本作品は、高さ160センチメートル、幅347.5センチメートルで、飾り金具には三葉葵があらわされている。六曲一双のうちの左隻で、右隻には同じく源氏物語の「絵合」の場面が描かれている。裏面は、浜千鳥を描いた金屏風となっている。

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