Detailed Explanation
表面は、源氏物語の中から左右異なる画題がとられているが、裏面は左右同じ画題、「浜千鳥」が主題であると見られる。
箔押しと思われる光沢の少ない金地は豪華だが落ち着いた印象を与えており、その上に墨でマツ、波涛や海面のうねり、岩礁、群れ飛ぶ千鳥を描いている。千鳥の群れはなだらかな曲線を描いて六曲一双の画面下半分ほどを右から左に飛び、左隻の第1~3面で楕円を描いて方向を変え、今度は左から右へ向けて、画面上半分ほどを画面の下半分で見せた流れと対称となるような動きで右隻第6面、右上方向に飛びさっていくように描かれている。
署名と印から作者は板谷桂意廣長(1760-1814)で、幕府の奥絵師であった板谷家の2代目である。板谷家は大和絵の画派・土佐派の流れをくむ住吉家の分家で、天明2年(1782)に創立された家である。
本作品は、高さ160センチメートル、幅347.5センチメートルで、飾り金具には三葉葵があらわされている。六曲一双のうちの右隻には源氏物語の「絵合」、左隻には同じく「胡蝶」の場面が描かれている。