007-01

源氏物語図屏風「絵合」〈右隻〉

Detailed Explanation

 『源氏物語』の第17帖「絵合」の巻、第2章第4段の描写を描いた屏風である。
 主人公の光源氏の養女・梅壺の女御の御前で、左方(梅壺側。光源氏方。)と右方(弘徽殿の女御側。権中納言方。)が、それぞれに絵巻物を見せ合い、優劣を決める場面である。
 画面には、御簾の中で、左右に分かれた女房(高貴な人に仕えている女性)たちが絵巻物を畳に広げて女御方に披露している。上座の3名の女性のうち、向かって右の女性がモミジの意匠の唐衣を着ていることから光源氏が後見する梅壺の女御、後の秋好中宮であることが推察される。ちょうど広げられているのは、かぐや姫で知られる「竹取物語」と、清原俊蔭が主人公の「宇津保物語」の絵巻であることが見て取れる。女性たちの衣装の柄、黒髪の毛筋、御簾の網目までが精緻に描きこまれた佳品である。左隻と同じく季節は春、サクラが時節を表している。
 署名と印から作者は板谷桂意廣長(1760-1814)で、幕府の奥絵師であった板谷家の2代目である。板谷家は大和絵の画派・土佐派の流れをくむ住吉家の分家で、天明2年(1782)に創立された家である。

 本作品は、高さ160センチメートル、幅347.5センチメートルで、飾り金具には三葉葵があらわされている。六曲一双のうちの右隻で、左隻には同じく源氏物語の「胡蝶」の場面が描かれている。裏面は、浜千鳥を描いた金屏風となっている。

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